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ラマダンの不思議

羊料理

昨日訪れたアブシンベル宮殿は、公共交通機関でのアクセスが困難な場所にあるので、
宿で往復の送迎ツアーに申し込んでいた。
このツアーは、日中の暑さを避けるために午前中に見学を済ませるのが定番だそうで、
早朝3時に起床して宿のロビーに集合するように言われていた。

眠い頭を抱えて宿の階段を降りていくと、早朝にも関わらず従業員がずらりと勢ぞろい。
どれだけ早起きなんだと驚きつつ、そのうちの1人が山積みのアラビアパンをテーブルに載せた時、
やっと何が起こっているのかに気付いた。

ラマダンが始まったんだ!

これから1ヵ月間、お日様が出ている間、イスラム教徒は断食する。
日中の空腹に耐えるため、日の出前の3時過ぎに一度起床して充分にお腹を満たした後、
再び床に就くという。
そう聞いてはいたけれど、実際に日の出前の食事風景を見るのは初めてだった。

アラビアパンの並べられたテーブルに、
おいしそうな香りと湯気と共にフライパンごと羊の煮込み料理が運ばれてくる。
すると、従業員のお兄さん達が手招きして一緒に食べようと誘ってくれた。
自分達は断食するつもりがないので御馳走になるのが悪いような気がして、
「私達はイスラム教徒じゃないんです…」と伝えると、
「そんな事関係ないよ。食べて食べて!」と招いてくれる。
促されるままに席に付き、見よう見まねでアラビアパンに羊の煮込みを挟んで口に入れてみた。
パンにジュワッと肉汁が染みて、本当においしい。
お兄さん達は、私達が喜んで食べるのを見て、安心したかのような、とても嬉しそうな表情を浮かべて、
もっと食べなさいというジェスチャーを繰り返す。
ひんやりした朝の空気を破る、アツアツのフライパンを囲んで、ラマダン前の食事を共にする。
断食とはもっと暗くて辛いものだと思っていたけど、彼らの表情は不思議と反対で、
何か楽しいことが起こる前の、期待に満ちたような明るい表情だった。

その日、私達はアブシンベル神殿を観光し、くたくたになって宿に戻った。
疲れや乾燥で喉がカラカラに乾いていたけれど、
ラマダン中に冷たいコーラを買いに行くのはなんとなく気が引けて、
部屋に戻って生ぬるい水を喉に流し込んだ。
昼食も外に出て食べ物を買うのがはばかられて、結局食べずじまいだった。
イスラム教徒でない外国人はラマダンが免除されるとはいっても、
やはり我慢している人の目の前で堂々と飲食する気にはなれない。
こんなに暑くて乾燥した土地でも、イスラム教徒は一滴の水分さえ口にしないのだ。

夕方、日沈前に宿のロビーに降りてみると、朝あんなに親切だった従業員同士が口げんかしている。
他の従業員も、心なしかピリピリした雰囲気。
誰しもお腹が空けばイライラする。
朝から何も口にせずの数十時間。
日没前はイライラのピークのようだ。

外に出てみると、通りは閑散としていた。
ラマダン期間中に空いているレストランなんてあるのかな?と不安になりつつ歩き回っていると、
あるローカルレストランの前に大勢の男性がずらりと座っている光景を目にした。
テーブルの上にはイフタール(断食を解くための日没後の食事)メニューがずらり。
食事を目の前に、誰一人として食べ始める人はいない。

その時、日没後の礼拝を呼びかけるアザーンが鳴り響いた。
と同時に、一斉に、ものすごい勢いで食事が始まった。
その勢いたるや、「一心不乱に食す」という感じで、見ているこちらはあっけにとられてしまった。
そして、食べるのが異常に早い。
男性達は、早々と食べ終わると、満足そうな表情で次々に席を立って去っていく。
誰も支払いをしていないので、どうやらこのイフタールはレストランが無料で振舞っているものらしい。
ラマダン中は、富める者が貧しい者へ進んで喜捨をすることが奨励されているそうだ。
私達がそのレストランを通り過ぎようとすると、
お店の人が「君達も食べていきなよ!」と声をかけてくれたけど、
一日中食事を我慢して食べ物を押し頂いている人々の横で、
悠々とご馳走になる気になれず、ありがたいけど断った。

断ったのはいいけれど、歩けど歩けど普通に営業しているレストランが見当たらない。
仕方がないので、売店でインスタントラーメンとパンを買って宿に帰ることにした。
これから一ヶ月間もこんな調子じゃ肩身が狭いなあと思って歩いていると、
やっと一軒のレストランが見つかった。

ケバブ焼きのお兄さん

店先では羊のケバブが湯気を立てている。
ヨルダン以来、少し飽きてきていた羊料理だけど、ここのは格別おいしく感じた。
というのも、お店に入ろうとした時から従業員の人たちがものすごくフレンドリーで、
特に親日家の店長とおしゃべりしながら気持ちよく食事できたからかもしれない。
レストランを探して私達がぶらぶら歩いているうちに、
レストランの従業員達もイフタールを済ませて心に余裕が出ていたのだろう。
日没前のピリピリした空気から一転して、食後の人々の陽気さといったら別人みたいだ。

知識としては知っていたはずのラマダン。
でも、空気を通して感じるラマダンは、もっとリアルだった。
朝からがっつり肉料理を食いだめすることなんて知らなかったし、
お腹の空き具合であからさまに人柄まで変わるのが見えたのもはじめてだし、
排他的な印象のあったイスラム教徒達が食事に招いてくれたのも意外だったし、
お腹を満たした後の開放感に満ちた空気もはじめて体験した。

食欲を抑制するのは、私から見ると苦行でしかない。
そんな苦行を、世界中の何億人のイスラム教徒が毎年一ヶ月間も当たり前に実行しているなんて、
不思議で仕方がない。
日没後と夜明け前にドカ食いするのも身体に悪そう…。
お腹が空くと集中力が低下して経済的にも生産性が低下しそう…。

でも、ラマダンには、単に飲食を絶つという行為以上の、
イスラム教徒にとって精神的に非常に重要なものが秘められているのだろう。
それが何であるのかは、コーランの教えを理解し、
毎年、世界中のイスラム教徒と一体感を共有しながらラマダンを実行しないと見えてこないような気がする。
やっぱりラマダンは私にとって不思議の世界だ。

ありさ
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Comments:2

かっちゃん URL 2011-12-01 (木) 01:50

物質的に豊かになって、食べたい時に食べられる現在の日本。飢えっていうのを感じられる機会って少ないと思うんだよね。

ラマダンっていう制度は、そんな飽食の時代の、一つの戒めになってると思うな~。

96ゆーじ&ありさ URL 2011-12-02 (金) 11:32

かっちゃん>
確かに、日本では飢えっていう単語自体、聞いてもぴんとこないだろうね。アフリカの子供が飢えていると聞いても、なんで?とかどういうこと?ってなるんだろうか…
かといって、当たり前のようになってる消費社会から抜け出すことはできないですけどね。

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